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吼える月
第13章 献身
「姫様、リュカ様のところに懇願にいかれようとしてましたね?」
「……っ」
「もしもそれが成功していたのだとして、だけど命からがら逃げてきた姫様が幸せになどなれるはずはない。だったらサクは……生涯自分のせいで姫様を不幸にさせたと悔いて、逆に姫様に縛られ続けますよ?」
「!!!」
「うちの馬鹿息子は、これからもっといい男になります。母親の私が保証します。ですがそれは、姫様のお側にいたら……のこと。姫様、私やハンに代わって、どうかサクの成長を見守っていて下さい。私達のことまで愛して、案じて下さっているのなら……」
サラは、うっすらと涙を溜めながら唇を震わせた。
「親はね……いずれかは子供を手放さなければならないものなんです。どんなに手放したくないと枷をつけても、子供は旅立つものです。旅立たせないといけないものなんです。
私も……そうでした。家族関係は良好すぎるほどだったのに、私もまた、親から追い出されました。そうして今、私はハンという素晴らしい伴侶とサクという息子に恵まれ、幸せになれました。親元から旅立たねば、私は今以上の幸せな環境にはいないでしょう。
だからサクの幸せを祈るのなら、サクの意志を尊重しなければ。サクを自由にしなければならないのは、姫様からではなく……私達からなんです」
「サクの意志……」
「それは姫様と共にあること」
――我が主は、ユウナ姫だけですから。
――共に在ることだけが……俺の心願。
ユウナは辛そうに目を伏せた。