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吼える月
第13章 献身
そして、ハンの横で、顔を赤く沸騰させたサクが、長い髪のままの頭を抱えてその場に蹲(うずくま)った。
言葉も出ない様子のサクの頭を、ハンは片手でわしゃわしゃと掻き乱すと、体を揺すって大笑い。笑い上戸が炸裂だ。
「サク……お前、求愛通り越して、求婚されたぞ。どうするよお前――っ」
「きゅ、求婚……?」
ユウナは心外だというような、上擦った声を出した。
「ええ、ええ。どうぞ、どうぞ、姫さん。不甲斐ねぇ馬鹿"虫"ですが、ぷちっと貰ってやって下さい。ぷぷぷ……あはははっ!!」
蹲るサクは、ユウナを上目遣いで見遣る。
「なんで……俺じゃなく、お袋にそんなことを言うんですか」
「だ、だって……」
「俺、あんなに皆の前で宣言したのに……姫様逃げて避けたくせに。なんで俺のいないところで、勝手にそんな可愛いこと言うんですか」
「か、可愛いこと?」
「なぁサラ。真っ赤な顔で会話しているふたり、初々しいなぁ」
「うふふ。やっぱり赤飯にしてよかったわ。って、ハンは駄目!! ハンは私が作った白い方よ。そっちを食べちゃ駄目!!」
「お前も十分可愛いこと言うな……」
「姫様、切って下さい」
「もう切っちゃったわよ、護衛役」
「その切るじゃねぇですよ。髪、俺の髪!!」
「ええ、切っちゃうの!?」
「……。姫様、長い髪が好みなんですか?」
ふたり同時に思い浮かべたのは、長い髪の"光輝く者"達。
「いいえ。切りましょう。ざっくり、つるっつるに」
「――っ!? いつも通りの長さにして下さいっ!! 襟足にかかるくらいの!!」
「つるっつるに行くわよ――っ」
「……亭主関白にはなれねぇな、サク。まぁ、嬉しくて甘えているんだろうが」
「あら、もうサクを姫様に嫁がせる気?」
「だって初夜を経て求婚されちまったら、許さねぇわけにいかないだろう」
「そうね、私も大歓迎。……ふふふ、嬉しそうね、ハン」
「……まぁ、俺も長年、サクを応援してきていたからな」
「ふふふ。娘が出来ちゃった」
「……サラ。血の繋がった娘も出来るぞ? 息子もな……」
「あ、だめ……こんな、サクと姫様が居る前で……」
「うるせぇ外野っ!! 出てけ――っ!!」
サクの怒声が飛んだ。