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吼える月
第13章 献身
「言ったろ、サク。武神将として、お前の父親として。俺はなんとしてでもお前達を出航させる。だから俺を信じろ」
サクはくっと唇を噛みしめ、そして言った。
「俺はまだまだ親父に教わりたいことあんだ。だから……息災でいてくれよ。両腕両足切り取られても、絶対生きていろよ」
「なにを不吉な……。大丈夫だって」
「武神将であろうがなかろうが……一番尊敬する親父には変わらねぇ。だからどんなにみっともない姿さらしてもいい。生きていてくれ。お袋と一緒に……」
サクの最後の声は震えた。
「俺は……親父が恥じねぇ男になってみせる。親父あっての息子だと、あの親父を超えた武神将だと、絶対他から言わせてみせる。
親父、お袋……」
サクは涙の溜まった目で、笑った。
「俺を生んでくれてありがとうな。俺の親でいてくれてありがとう。
ふたりのおかげで俺は命を繋いでいる」
「サク……」
ハンは片手で胸にサクの頭を掻き抱く。
「だから次は、姫様の命を繋ぐ。親父達が俺を護ってくれた愛情以上に、今まで注いでくれた愛情以上に、姫様に愛情を注ぐ」
「笑って別れるつもりが、なにしんみりさせんだよ馬鹿息子。それにな、姫さんだけじゃなく、俺らにちっとは愛情を返せよ」
「ははは。そのために生きろよ。俺、死体には返さねぇから」
「ああ、わかったわかった。サラの白髪染めと子供の玩具、土産に頼むぞ」
「任せとけっ!!」
サクは手の甲で目許を拭う。
「じゃあ行くか、姫様」
「………」
ユウナが泣きながら、ハンとサラ双方に両手を拡げて抱きついた。
「大好きよ、ふたりとも……大好き。だからまた会いたい。絶対会いたい。あたしの……もうひとりのお父様。そしてお姉様……」
「姫さん……」
「姫様……」