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吼える月
第13章 献身
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「さぁて。やはり番狂わせが始まったか」
ハンは険しい眼差しに、挑戦的な光を湛えた。
「ええ。これは準備が整った合図ではないわね。……危険を知らせる方」
サラもまた、その眼差しに剣呑さを宿した。
「恐らく、今回の計画はすべて筒抜けだ。元々……俺に対してやっかみが強い奴だった。武神将という肩書きから、そこらへんは納得してくれていると思っていたんだが……」
「黒崙はハンあっての街だもの。ハンがいなければ、街の民は"彼"の言葉には従わないでしょう。いくら善人面していても、裏では玄武殿の重鎮達に賄賂を送り続けていた男だから……」
「それで他国との密売での儲けを黙認して貰おうとしていた。だがそれはリュカには通用しなかった。だからリュカが次期祠官……その話が壊れても祠官代理にて、事実上の頂点になることを知り、リュカと交流がある俺に恩を売ろうとして俺と黒崙に残ると言ったり、執拗にユマを嫁がせて縁戚関係になろうとしたんだろう。
だが俺が力を無くし、利はリュカにあると見て直接恩を売りに行ったか、
――街長は」
ハンは自嘲気に笑った。