この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第14章 切望
不可思議な存在と成り果てた警備兵が追手となり、さらには餓鬼の出現。
餓鬼から逃れるためには、必死に走って逃げるか……玄武の力で霧散するしか手立てがないことは、何度も餓鬼と相対して撲滅してきたハンには、経験上わかったいた。
今のハンは、殲滅させる力がない。
だが、サクとユウナを護ろうとしてくれた、優しい民が逃げ切れる時間くらいは稼ぐことが出来る。
遠い昔、塞いだという街の裏門。
その解放をサラとサカキに任せて、ハンはひとり街の外に出た。
街と外界を結ぶ唯一の通行門である正門……鉄の扉を閉め、正門の外側にて、警備兵であれ餓鬼であれ、外部のものは一切入れない。
民が開かずの裏門より逃げ切れる時間を作るために、ハンは民の盾となったのだった――。
まず、現われたのは警備兵。
「ここから先は通させねぇぞ!!」
ハンの片手に握られた大刀が、宙に旋回する。
吹き飛ぶのは、苦楽をともにした仲間であり部下達である警備兵。
……その多くは、サクの目を信じる限り……死人。
それら警備兵の面子の中には、つい最近まで共に行動をしていた精鋭隊はいなかった。皆、隊長のサクに任せて、赤き月夜、玄武殿の警備につかせた者達だった。