この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第4章 回想 ~崩壊~
 


「リュカ……っ」


 顔を手で覆い、感極まってさらに泣き出すユウナ。


「姫様。泣くとぶっさいくな顔になりますよ」

「……っ!!」


 ユウナは慌てて手で目を擦る。

 可愛らしい仕草をする愛しい姫の背中をぽんぽんと叩いて、サクはふっと真面目な顔つきになって言った。


「ならば俺も誓おう。大事な姫様とその夫となる我が友に、俺はこの命捧げると」


 リュカとユウナの前でゆっくりと――、サクは腰を落とし片膝をつきながら、左手拳に右の掌を添えて頭を垂らす。

 それは臣下の取る、宣誓の儀礼。



「サク=シェンウは、未来の黒陵祠官夫妻に生涯お仕え致します」



 手首と首から、黒水晶が揺れた。


 誰からも文句つけられぬほど見事な臣下の姿勢。

 頑なな決意をもって示すのは変わらぬ敬愛と友情――。


 だがサクの唇はわなないていた。

 拳を押さえるその手も同様に震撼していた。


 彼の強靱な意志では抑えきれぬほどの激情をもてあましながら、それでも必死にそれを押し殺そうとするサクは、くいと顔を上げてリュカを見た。



「姫様を、絶対幸せにしろよリュカ!! 約束だからな!!」


 昔から変わらない屈託ない笑みを無理矢理作りながら。


「……ああ」


 リュカも声を震わせながら、無理矢理に笑う。

 潤む漆黒の瞳は、ユウナに向けられる。


「姫様、おめでとうございます! お転婆すぎる姫様を貰いたいという奇特な相手がいるのかどうか、俺内心ひやひやしてました。だけど、それがリュカであるのなら、姫様に長くお仕えしてきた俺も安心です」


 いつものような軽口も、か細く震える。


「姫様は誰よりも幸せになれます。有言実行のリュカが……皆の前でそう約束してくれましたから!」


 陽気に笑うサクの目から――



「今後とも、よろしくお願い致します。

――……従僕として」



 一筋の涙が零れた。

/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ