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吼える月
第14章 切望
――父上~。
泣きながらでも必ずこちらの期待以上のものを返してきたサク。
理論より実践にて成長してきたサク。
見たい。
サクの成長を、サラともっと見たい。
サクが活躍する舞台を見守りたい――。
そのためには、この金の男に打ち負かさねばならない。
絶対、生きて勝ってやる――。
ハンは闘志に燃えていた。
突然のサクの助力により、ハンの顔には先ほどまでの……追いつめられた者特有の焦慮感や諦観はなかった。
そこにあるのは、闘いを性としたような男の、活き活きとした姿だった。
それを見てサラもまた、刃を振るいながらも微笑む。
――うっせぇよ、親父。
ハンにいじられふて腐れるサクの姿が、サラに走馬灯のように駆け巡る。
ハンはサクの成長のためにと、あえて手を差し出すことはしなかった。遠くからサクが泣いて苦しむ姿を、時に厳しく……だがその影ではやるせない表情で見つめていた優しい父親だった。
本当はすぐに手を差し伸べたいのだろう。
いつもそんなハンの姿に、心を痛ませていたサラ。
一年前、ユウナとリュカの婚姻が決まった時から、ハンの元気もなかった。サクの手前、普通に振る舞っていたけれど、サラには……ハンもかなり心痛を抱えていることがわかっていた。
そのハンが笑っていた。
近年最高の輝きをもって、闘いに身を投じていた。
戦うことが好きなわけではない。
争うことが好きなわけではない。
自分にとって、戦うことに正当な意義を見いだした時、ひとは誰よりも輝くのだ。