この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第15章 手紙
 
 
 事態はさらに深刻で。

 大砲の対象は自分達だけではなく、船にまで及ぶらしい。


「そんな、大体船にはあんなに多くのひと達が……」


 ユウナの声に、兵士のひとりは薄笑いを顔に浮かべた。 


「知ったこっちゃない。上の命令に従順であるのが我が近衛兵の務め。黒陵如き田舎の兵とは鍛えられ方が違う。だから兵士に裏切り者など出るのだ。なぁ、サク=シェンウ?」


 サクは怒りを抑えながら考えた。

 
 このまま自分は別人だとシラを通して口先で戦うか、罪なき者達の命とこの国から脱出できる唯一の船を失う覚悟で、力尽くで突破するか。



 さあ……どうする?

 親父なら、お袋なら……どうする?



 その時声がした――。





『ネズミが食いたい……』 





 くったりとしたまま、死にそうな口調で。



「………」



 眉間に皺を寄せて目を瞑ったサクは、あえて無視した。


『これ、ネズミ……。ネズミをもってこぬか。小僧、力が戻ったのなら、力でわんさかネズミを……』


 サクのコメカミにぴきんと青筋が立つ。


「うるせぇよ、イタ公。俺の力はネズミ寄せのためじゃねぇよ!! 親父に失礼だろうが!!」


 サクがユウナの持つ……白イタチに向けて叫ぶと、兵士達はぎょっとした顔をサクに向けた。


「おい。その亀はなんだ!!」

「黒陵国は、亀を信仰する国。亀に対するそのぞんざいな扱い……と見せかけ、この男は、この亀を使ってなにかしでかす気じゃ……」



『……おい小僧。亀、亀と呼ばれているのは誰のことか』



 サクにだけ見える白イタチの玄武は、まだ微睡んでいるような目をくりくりと動かし、眠そうに欠伸をした。

/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ