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吼える月
第15章 手紙
  
「あ~関係ねぇ。お前はイタチだ。白いふさふさの」


 どうでもいいようにサクはぶっきらぼうに答えた。


『ふむ……。しかし亀だと言う者達が、一同我を見ている気が……』 

「お前寝惚けてるんだ。ほら寝てろ。ネズミ取ったら起こしてやる」

『ふむ。ならば寝る。腹が減って起きているだけで辛いわ。ZZZZZ』


「この男がひとりぶつぶつ呟いているのはなんだ?」

「なにか妖しげな術を発動させる呪文か?」



「きゃっ、イタ公ちゃん手から外れちゃった、落ちちゃう!!」

「うわっ……と」


 両手が塞がっているサクが、自らの腰帯にさしているサラの赤い柄で受け、それを一度宙に飛ばすとユウナの手元に返した。


「よかったわね、イタ公ちゃん」


 肝心のイタ公は熟睡中だ。



「やべ……船が、船が出ちまう――っ!!」



 そんな時だ。


「それは――」


 兵士達が驚いた声を出した。



「その赤い柄についている"それ"を、見せてみろ!!」




 それは――。

 ユエと名乗ったあの赤い着物の少女が、無理矢理に柄につけて寄越した木札だった。


 それを何度も確認した兵士達は震える声を発する。


「これは……この模様は、皇主印。この模様のある木札を持って歩く者は、暫定的に皇主同等の権限が与えられていると聞く。

そしてこの木札に書かれた"月"の印は、皇主の密命を受けたものの印――。

お前達、皇主の命で各地を回っているという、隠密集団"月(ユエ)"なのか!?」


 それは同時に――。


――きゃははははは。


 あの訳知り顔のふたりに向けたい言葉となる。

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