この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第15章 手紙
「あ~関係ねぇ。お前はイタチだ。白いふさふさの」
どうでもいいようにサクはぶっきらぼうに答えた。
『ふむ……。しかし亀だと言う者達が、一同我を見ている気が……』
「お前寝惚けてるんだ。ほら寝てろ。ネズミ取ったら起こしてやる」
『ふむ。ならば寝る。腹が減って起きているだけで辛いわ。ZZZZZ』
「この男がひとりぶつぶつ呟いているのはなんだ?」
「なにか妖しげな術を発動させる呪文か?」
「きゃっ、イタ公ちゃん手から外れちゃった、落ちちゃう!!」
「うわっ……と」
両手が塞がっているサクが、自らの腰帯にさしているサラの赤い柄で受け、それを一度宙に飛ばすとユウナの手元に返した。
「よかったわね、イタ公ちゃん」
肝心のイタ公は熟睡中だ。
「やべ……船が、船が出ちまう――っ!!」
そんな時だ。
「それは――」
兵士達が驚いた声を出した。
「その赤い柄についている"それ"を、見せてみろ!!」
それは――。
ユエと名乗ったあの赤い着物の少女が、無理矢理に柄につけて寄越した木札だった。
それを何度も確認した兵士達は震える声を発する。
「これは……この模様は、皇主印。この模様のある木札を持って歩く者は、暫定的に皇主同等の権限が与えられていると聞く。
そしてこの木札に書かれた"月"の印は、皇主の密命を受けたものの印――。
お前達、皇主の命で各地を回っているという、隠密集団"月(ユエ)"なのか!?」
それは同時に――。
――きゃははははは。
あの訳知り顔のふたりに向けたい言葉となる。