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吼える月
第15章 手紙
今からならば新生玄武を起こしている時間もなければ、空腹にくたびれかけたイタチもどきが役には立てない。
「それでもなにもないよりはマシ。自ら力を使えば罰則が科せられるとか言ってたけど、ここは緊急事態だ。姫様――っ、頼みがあります」
「ええええ!? 今――っ!?」
「それとは違いますっ!! こんなことには使いませんっ!! 俺、力でふんばりますから、姫様……ネズミを取ってきて下さいっ」
「ネ、ネズミ!? ネズミって、あの尻尾が長くてちゅうちゅう……」
「そうです、その"ちゅうちゅう"です!! 早く――っ」
「サ、サク……あたしネズミ……。――っ、頑張るわっ!! ちゅうちゅうの一匹や二匹……怖くなんて……、気持ち悪くなんて――っ!!」
「きゃあああ、頭にネズミが、ネズミが走って……」
「よっしゃあああああ!! ちゅうちゅう、そこね!?」
タイミングよくネズミの所在を知ったユウナが奮然とネズミとりにかかる間、サクは力を制御する手首から毛細血管を吹き飛ばし……血を迸らせていた。
「くそっ、命中すれば餓鬼は消えるが……これじゃキリが……ねぇんだよ。雨降らせても、この船が沈んだら――っ」
「サク――っ、捕まえたわ、ちゅうちゅう一匹っ!!」
「でかしましたっ!! それ、イタ公に食わせて下さい」