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吼える月
第15章 手紙
 
「はい!? 亀にネズミ!?」

「ああ、細かいとこ無視して。イタ公がんがん甲板にブチつけて起こして構いませんから、ふにゃふにゃ言ったら口にネズミを頭から突っ込んでやって下さい」

「なんですって!? ふにゃふにゃ……こんなに小さな亀の口にネズミ突っ込む……」

「時間ねぇんですよ、って……なんだこりゃあああ!!」


 またなにか危機だと思ったユウナは、子亀をひっくり返してそのお腹を指でつんつんと押した。

 少しだけ反応がある。今度はぴんぴんと弾いてみると、亀の四肢がひくひく動く。


「イタ公ちゃん、お食事の時間ですよ。新鮮なちゅうちゅうをお持ちしましたよ……」

 ユウナはネズミの尻尾を指で摘まんだまま、横を向いてそう言うと、ぐいと下から引っ張られた。


「?」


 すると――。


「きゃあああああ!!」

「姫様!?」


「サク、サクサクサクっ!! ネズミが……尻尾から先がなくなっちゃったの、どうしよう誰が横から食べたのかしら」

「そこのそいつですよ。ゲップしてるそいつ」

「イタ公ちゃんが!?」

「だから大好物なんですって。おいこらイタ公、この状況説明しろよ」


 サクはのそのそと這ってきた……だがサクの目には二本足で闊歩してきた白イタチを頭に乗せた。


 サクが促したのは港との間の海原。

 そこには、大きな水の壁が出来……近づく餓鬼を悉く消していたのだった。


「俺はやってねぇぞ。イタ公か?」

『………』

「親父でもねぇんだろ。だったらあんな力は誰が!?」


『小僧、お前は既にわかっているだろう?』

「………」

『感じているはずだ。同じ……我、玄武の力を』

「………」


『あれを作り出しているのは、あの者だ』



 そこに居たのは――。


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