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吼える月
第4章 回想 ~崩壊~
「気持ち悪ぃことすんなよ」
「お前は俺の息子だ。息子を触ってなにが悪い。ぐだぐだ言うな」
サクは、ハンの手を払いのけようとしなかった。
「……親父はさ、ユウナの相手……誰がよかった?」
「……。俺の息子以上にいい男はいねぇよ。最後まで従僕の姿勢を貫いて、リュカと姫さんをまとめたお前を、俺は心底誇りに思うぞ?」
「はは……。親父が褒めるなら明日は嵐だな」
「なんだそれ。俺はお前を認めてるぞ、頭は馬鹿だけど」
「うるせぇよ。親父に似たんだよ」
「お前、最強の武神将に喧嘩売ってるのか?」
ハンに額を小突かれたサクは、小さく笑った。
「祠官が親父を結婚相手にと言った時は、流石に狼狽えた。それだけは俺、絶対許さないつもりだった」
「当然だろ。なにが嬉しくて、息子の想い人を妻にするんだ。大体俺は、自分の妻に……サラにべた惚れだ」
「ははは……。いい年していつも家でイチャイチャしてるの、見せつけられてる息子は恥ずかしいんだからな。
……俺も出会えるかな、そんな相手に」
「ああ、絶対。俺にとってサラがそうであったように、お前が心から幸せを感じられる、運命の女は絶対いる。お前が離れたくても離れられねぇ、そんな女がな。
だからサク……強くなれ。俺を超える武神将になって、姫さんやリュカ、そして運命の女を守り支えろ」
サクは悲しげに笑いながら、蒼穹を見上げた。
澱んだ心とは裏腹に、実に見事に晴れ渡った清々しい空だった。
いつか、自分の心も晴れ渡るだろうか。
「ああ、強くなりてぇよ。
……だけど」
だけど今は。
幾らこの無残な現実を予感して覚悟していたといえども、今は。
「辛ぇや……」
そうした未来が見えなかった――。
「お前は俺の息子だ。息子を触ってなにが悪い。ぐだぐだ言うな」
サクは、ハンの手を払いのけようとしなかった。
「……親父はさ、ユウナの相手……誰がよかった?」
「……。俺の息子以上にいい男はいねぇよ。最後まで従僕の姿勢を貫いて、リュカと姫さんをまとめたお前を、俺は心底誇りに思うぞ?」
「はは……。親父が褒めるなら明日は嵐だな」
「なんだそれ。俺はお前を認めてるぞ、頭は馬鹿だけど」
「うるせぇよ。親父に似たんだよ」
「お前、最強の武神将に喧嘩売ってるのか?」
ハンに額を小突かれたサクは、小さく笑った。
「祠官が親父を結婚相手にと言った時は、流石に狼狽えた。それだけは俺、絶対許さないつもりだった」
「当然だろ。なにが嬉しくて、息子の想い人を妻にするんだ。大体俺は、自分の妻に……サラにべた惚れだ」
「ははは……。いい年していつも家でイチャイチャしてるの、見せつけられてる息子は恥ずかしいんだからな。
……俺も出会えるかな、そんな相手に」
「ああ、絶対。俺にとってサラがそうであったように、お前が心から幸せを感じられる、運命の女は絶対いる。お前が離れたくても離れられねぇ、そんな女がな。
だからサク……強くなれ。俺を超える武神将になって、姫さんやリュカ、そして運命の女を守り支えろ」
サクは悲しげに笑いながら、蒼穹を見上げた。
澱んだ心とは裏腹に、実に見事に晴れ渡った清々しい空だった。
いつか、自分の心も晴れ渡るだろうか。
「ああ、強くなりてぇよ。
……だけど」
だけど今は。
幾らこの無残な現実を予感して覚悟していたといえども、今は。
「辛ぇや……」
そうした未来が見えなかった――。