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吼える月
第15章 手紙
それはゲイか?
ゲイだとすれば、神獣以上の力があって、なぜリュカに祠官を殺させた?
4国の祠官が力を合わせた"結界"に阻まれたゆえか?
ならば、4国で結界を張るあの予言の夜以前になぜ行動を起こさなかった?
なぜ予言の日に"決行"し、リュカに玄武の力を持たせた?
なにより、なんでそんな危険すぎる"光輝く者"について、リュカ以外気づかなかった? 俺も他の武神将もすべて含めて。
リュカだけはどうして気づけた?
俺ら武神将が遮煌にて虐げた"光輝く者"はすべて無力な者達だった。
リュカがゲイの存在に気づけた理由が、"同胞ゆえの共鳴"というのであれば、"光輝く者"には俺達が把握してねぇなにかがあるってことだ。
そして民達を護る神獣の力を凌駕する存在があると、世間に知れ渡れば、これは国を揺るがす大騒動になるだろう。
世を混乱に陥れられるその存在があり、玄武殿は滅せられたというのに、穏やか過ぎるのが無性に気になる。
なぜゲイは動き出さねぇ?
動きがねぇのはリュカもそうだ。
なぜお前と姫さんの捕縛ばかりに躍起になる?
黒陵を既に奪い取る力があり、黒陵の姫との婚姻で得る次期祠官という立場を利用せずとも容易く国を奪い取れる環境にあるのに、なぜ今までずっと姫さんとの婚姻を解消しなかった? なぜ姫さんだけを生かしていた?
もし、姫さんがその現場を見ていなかったら、リュカはどうしたのか。
姫さんとそのまま結婚したのか。
それとも姫さんを殺したのか。
リュカは先見の明がある。
動く時は必ず先に策を講じている。
それがどんな非情な手段であれ、捨て身の手段であれ。
そうしてのしあがってきた男だ、お前がどう思おうと。
だからこの平穏さが、さらなる大嵐の予兆にも思えて仕方がねぇ。
この先、お前達が体験した以上のことが起きそうな予感がするんだ。
ま、俺が生きている限り、好きにはさせねぇけどよ。
そして――。
俺はな、サク。
あの予言の夜に祠官ひとりでいるはずの紫宸殿側から、鍵が開いていたというのがどうも腑に落ちねぇんだ。