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吼える月
第15章 手紙
「姫様がご両親の関係を夫婦の形とするのなら、俺だってそうです。俺……嫁に激甘になる親父の血、思いきり色濃く引いていますから、寂しい思いをさせたらその分以上挽回します。つーか、多分俺が耐えられねぇ」
サクはユウナの頭を抱きしめながら、聞いた。
「そんな俺の嫁になるの、姫様は嫌ですか?」
僅かに声を震わせながら。
「俺は姫様の婿じゃなく、姫様を嫁として娶りてぇんです」
そこに、明確な自分の意志があるのだと強調して――。
なんで急にサクがこんなことを言い出したのかユウナはわからない。
今まで、そんなことを冗談でも言わなかったのに。
「ど、どうしたの……突然」
「……突然じゃねぇですよ。姫様が幸せ幸せ言うから……」
「もしも1年前――。あたしがリュカではなくサクを選んでいたら」
サクはユウナを抱きしめたまま、びくりと身体を震わせた。
「今頃あたしは、サクの嫁として、幸せに笑っているかしら」
「……当然です。"今頃"だけではなく、この先ずっとずっと姫様は笑ってます。将来は、沢山の……姫様が産んだチビ共に囲まれてますよ」
「ふ、ふふ……小さいサクが一杯か。ふふふ、あのサクが……沢山。"父上~ごめんなさい~"と泣いていたのが、"クソ親父"と口悪くなるチビサクがいっぱい……、ふふ、ふふふ……。なんだか子育て大変そうだけど、サクは意外に子供好きだから面倒見はよさそう。ハンもそうだしね……。ふふふ」
「そうです、俺は子供好きですが……ここ、笑うとこですかね?」
「ふふふ、ふふ……ふふふ……ふぇっ……」
「姫様?」
笑いが泣き声に変わったのに驚き、サクがユウナを見た。