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吼える月
第15章 手紙
 

 自らがなにを掴んでいるのかわからぬまま、優しく触れば触るほど堅くなる"それ"。同時にサクの口から苦しげな声が漏れた。

 眉根をぎゅっと寄せたサクが、特に下半身をもぞもぞ動かす。


「ああ、やっぱり辛かったのね。今助けてあげるわ。引っこ抜くからね!?」

「!!!!!!!」

「あれ、抜けない……って、サク動かないで。動いたら手から滑って……あれ、どこにいっちゃったんだろう。ここ? ここ?」

「……はぁ……っ、はぁ……っ」

「ああ、苦しそう。大丈夫かしら。サク、とりあえずはどっかいったようだから、もうこれ以上は痛くならないわ。治るようにおまじないもしてあげる。本当はその部分にしたいけれど……届かないからこっち」

 ユウナが、苦しげに強ばった顔をしたサクの頬に接吻をする。


「……っ!!」


「……。すごいおまじないの効き目ね。ぴたりと止ったわ。サクの表情が柔らかくなった。というより、緩んでいるような……」

「………」

「あら、今度は強張った。……実は起きてるとか?」

「……っ!?」

「今、動揺が走ったような?」

「すぅ、すぅっ」

「な、わけないわよね、これだけ気持ちよさそうに寝ているのであれば。しっかし、過呼吸になりそうな寝息ね。治すには、鼻つまむんだっけ? 口塞ぐんだっけ? ……。わからないから、両方……おや、治った。あら、汗ばんでいるわ。よほど苦しかったのね、可哀想に」


 改めてよくみたサクの顔――。


 精悍で整った顔だった。

 髪型はいつものサクだというのに、そこから覗くのは大人の男。


 すっとした鼻梁。

 長い睫毛。

 野性的に引き締まった容貌。


 寝ていても艶香を纏い、妖しげな気分にさせる。
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