この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第15章 手紙
――必ず、リュカ以上に俺を求めさせてみますから。
好きだと、嫁にしたいと……言葉を紡いだのはこの唇。
いつもいつも悪態ばかりつく、この薄い唇。
「……っ」
眩暈がする。
引き込まれそうだ――。
唇同士を重ね合わせたくなりそうな、はしたない誘惑を振り払うように、無意識に近づけていた顔を慌てて離すと、ぶんぶんと頭を振った。
狸寝入りをしているサクはわからない。
「サクの嫁……か。嫁……うふふ……」
ユウナが、無意識に蕩けるような顔をしていたことに。
"嫁"を反芻したユウナの顔には、今までサクが見たことのない……乙女の表情があった。
そしてその顔は、リュカすらも見たことがないもので。
「サク……あたしね、嬉しかった。すごく嬉しかった……。サクになら……恋や愛、教えて貰いたいな。少しずつ……。ふふふ、勝負か……」
サクを見つめる優しげな眼差しが、今までとはどこか違う熱を孕んで揺れていたことも、
「なんだかあたしも……眠くなっちゃった……」
サクの肩に頭を寄せるように目を閉じたユウナの顔が、幸せそうな表情を浮かべていたことも、サクにも……そしてユウナ本人にもわからなかった。