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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
明日からは、リュカが夫となる。
不吉な予言がなされている今夜は、独身最後の夜――。
どうして突然そんなことを言い出したのか。
それをサクに相談したくても、サクはその時その場にいなかった。
厳密に言えば、1年前にリュカとの婚姻が取り決められた後から、リュカがユウナを部屋を訪れる時には、サクがすっと部屋から出るのだ。
そしてその日、サクはユウナの部屋に戻ってこなかった。
明日婚儀だからと、気を利かしているつもりなの――?
あの武骨なサクの機転だというのなら、これほどおかしいことはなく……これほど寂しいことはなく。
三人、いつまでも一緒にいられると思っていた。
誰が遠慮するということなく……。
1年前のあの後から、サクはなにか変わってしまった。
以前のように元気な笑いがなく、表情や行動に覇気がない。
寂しげに見えるその翳りが、奇しくも野性味溢れたサクの……男としての妙味を強めていた。
落ち着いた大人の男としての様相になっていた。
ユウナが見知らぬ男のように――。
気軽に話しかけられない。
なにか距離を感じて、会話が途切れてしまう。
そんなユウナの狼狽を感じれば、サクは見透かしたようにそっと部屋を出る。
――少し、体動かしてきますわ。
昔は、喧嘩しようがなにをしようが、退室などしなかったのに。
ひとりで大人になっていくのか。
自分を残して行こうとするのか。
そんな折ユウナの耳に、サクの噂が届いた。
サクには、"特別"に親しくしている女がいる。
それはサクの住まう街にいる、ハンも気に入っている少女なのだと。
もう結婚までの話は整っているけれど、まずはユウナの結婚が先だとサクが先延ばしにしているらしい……とのことを。
……初耳だった。