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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
サクは、白イタチが入ってきた時のことを思い出す。
……あの時は、不可抗力的だったのだ。
ユウナと同衾していれば気が昂ぶるからと、部屋の外で潮風にあたろうとしたところ、……襲ってきたのだ。
忘れ去っていた、ユウナの寝相の悪さが。
突然服を掴まれ、サクが体勢を崩した途端、抱きつかれたのだった。
――しゃむ……。ぬくぬく、ぬくぬく……。
大きくはだけた裾から延びる艶めかしい白い太腿をサクに絡ませて、温もりを求めて服の中のその肌に直接手を差し込み、頬をつけようとしてくる。
――ぬくぬく、しあわせ……。うふふ…。
両想いならまだしも、ここで手を出してはいけないと逃げるサクに対して、寝惚けるユウナは子供に返って泣き出した。
――ああああんっ、しゃむい~。ぬくぬく、ぬくぬく……っ。
愛しい姫の目から大粒の涙。
泣かせたのはサク。
理由は、サクがユウナから離れようとしたから。
寝惚けているとはわかっている。
寝相の悪さもわかっている。
だが……。
ユウナに愛の言葉を告げた後のサクは、ユウナから想いが返ってきたように思えて嬉しかった。
錯覚でもなんでも、求められることが嬉しくてたまらなくて。
それならばもう自分がどんな状態になろうとも、絶対離してやるものかと覚悟を決めてユウナを抱きしめようとした時、"奴"はやってきたのだ。
鍵がかかっている扉などなんのその。
四つん這いで移動する動物のくせに、当然のように二本足歩行。
のっそのっそとやってきた、白いふさふさな"奴"は、寝台で絡み合おうとしているサクを見ると、
――小僧、なにをしておるかっ!!
シャーッと牙を剥き、定位置のようにサクの頭に座ると、ずっしりとした"重石"つきでの拳立ての鍛錬を課したのだった。