この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~ 
 


「サ、サク!?」

「この場所から見るのが、穴場らしいです。ただ風がひどいようなので、俺が風よけになります」



 目の前には――。


 無限の広がりを見せる、蒼茫たる大海。

 そして澄み渡った蒼天。



「うっわぁぁぁぁぁ」



 その絶景さに、ユウナが思わず感嘆の声を上げれば、サクは嬉しそうにくすりと微笑んだ。



 強く吹く潮風が、しばらく風景に魅入るふたりを揺らした。



「……姫様。昔から、空は姫様と一緒に見てきましたよね。外からでも室内からでも。

そして今俺達の前には、黒陵の山など……一切隔てるものがない海がある。俺達、初めての景色を、こうやって一緒に見ているんです。太陽にきらきら輝いて……眩しいほどに綺麗だ」



 サクは、ユウナの頭に愛おしそうに頬ずりをしながら、掠れた声で囁く。


「凄く綺麗だ……」



 ユウナは、頭上にサクの熱を感じ、鼓動を早めた。



「あまりに綺麗過ぎて、だけど……あまりに手が届かなすぎて、……切なくなる。こんなに……近くに見えるのに、遠くて……。

どうすれば、手に入れることができるのだろう……。俺の手が届かないのなら、どうすれば、俺のもとに来てくれるのだろう。どうすれば、俺のところに来たいと思ってくれるのだろう」



 それはなにに対してなのか、わざとぼかして。



「俺のものに……なればいいのに。

俺は……ずっとここにいる」



 再び、ユウナの胸がきゅんと音をたてて、甘く疼く。



「俺だけのものに……してぇ……」



 絞り出すような声を吐いた後、サクはそれ以上……口を開かなかった。


 

/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ