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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
多分……ハンに、昔から色々神獣については聞かされていた……はずだが、サクはそれすら聞かされたといいきれる自信がない。
なにせ知識という、暗記の"勉強"が大嫌いのサクは、左耳から右耳に流して聞いていた。しかも他の神獣のことなど、玄武の国で生まれ育った自分には関係ないと思えば、余計にただの音楽としか聞いていなかった。
興味がなければ即時に披露する……その見事なまでの綺麗な聞き流し方ゆえに、父からも母からも神獣玄武からも、警備兵の仲間からも、ユウナからでさえも"馬鹿"のお墨付きを貰っているのだ。
――あんなに説明しただろうが!!
何度ハンに怒られ、罰として素振りをさせられたことか。
ただひとり、リュカだけは、ユウナから相槌は打たされることはあるが、彼自身の口からサクを貶(けな)したことはなかった。
――サクは、馬鹿ではないよ。馬鹿なふりをしているだけの賢人さ。物事を覚えられないのではなく、理解しようとしないだけ。理解しようと心を動かせば、サクは僕よりも頭がいい。
今思えば、結局のところ……リュカが腹の底でなにを思っていたのかわからぬけれど、当時はリュカに褒められて有頂天になっていたサクだった。
サク以外は誰もが、リュカの世辞だと思っていたのだが。
――ねぇ、サク。神獣は……4つの大自然の力をそれぞれ司るそうだ。
いつの頃だったか、問いかけてきたリュカの言葉を思い出す。
――君やハン様は水の玄武の特質があるとはいえ、どうも他の武神将や国の風土の特質が僕は腑に落ちないんだ。四神獣は倭陵の鎮護の要。それが特質が合わない状態で祀られていることが、どうも釈然としない。
……確か、そんなことを言っていたような。
リュカが釈然としなくとも、そう成り立ってきているのだからいいじゃないかと、サクは笑い飛ばしていたのだが、なぜ今、あの時のことが蘇ったのか。