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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
心底、ユウナに仕えたいと思った。
心底、ユウナが好きだと思った。
心底、ユウナと生きたいと思ったあの時――。
本当なら今頃、親友の妻になっていた。
本当なら今頃、姫はリュカに抱かれていた。
リュカの名を呼び、リュカにあの顔を見せ、リュカに可愛い啼き声を聞かせ。そしてリュカだけしか、ユウナの身体を知るものはいなかった。
ユウナの身体をどう触れば、全身を蕩けさせるのか。
ユウナの身体をどう攻めれば、艶めいた女の顔で果てに向かうのか。
……どれだけ、ユウナのナカは熱く蠢きながら包み込み、至悦の享楽をもたらすのか。
どれだけ狂おしいほどの愛をかきたてるのか。
一生、サクは知ることがないと思っていた。
僥倖だということはよくわかっている。
……そこには、愛がないことも。
あるのは、自分からの一方的なものだけだ。
ユウナが身体を繋げたのは、正気ではなかったからだ。自分が手を出したのは、命がかかっていたからだ。
そうでなければ、見つめていただけに終わっていた……最愛の高嶺の花。
愛が欲しい。
ユウナから愛されたい。
果ての先で名前を呼ばれたい。
ユウナが欲しい愛が、リュカではなく……自分になって欲しい。
たとえユウナがリュカとのことを、罪悪感で固めて失恋の痛手から逃れようとしていても、それでユウナが納得していても、心の内ではリュカを求めている。
どんなにリュカに虐げられても、なおもユウナはリュカを忘れられない。
それは幼なじみとしての友情だけではない……だから、その名を呼んだのではないか。
――なぁ姫様、あんなに離れたくないって言ってくれたじゃないか。……呼んでくれよ。姫様が……ずっと一緒にいたい男の名を。
果てに行き着く手前。
サクが与える快楽に身を任せた、ユウナの本能が叫んだのは――。
――呼べよ、姫様。姫様を……愛おしく抱いている男の名前を――っ!!
あれだけの快楽を共にしながら、呼んだ男の名前は――。
"リュカ"