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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
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なんとか酔っ払いの執拗な手から抜けて、ユウナと部屋に戻ったサクは、ユウナに儀式をしたいと申し出た。
「"忠誠の儀"?」
「はい、姫様。主人たる祠官に武神将が絶対なる忠誠を誓い、玄武の力を介した主従関係になる儀式のことです。いわば親父と祠官の関係になりたいんです」
「え、でも今武神将はハンでは……」
「俺は親父より、そのすべてをもって……」
サクは声を震わせ僅かに下を向いた。
「サク?」
しかし上げたその顔に、崩した表情はなく。
硬すぎるとも思える、真摯な面差しで。
「そのすべての力が俺に移譲されました。それにより実質……俺が、玄武の武神将です。今後のことも考え、名実ともに姫様をより強くお守り出来るよう、神獣の加護を得て結束致したく。今一度……主従関係を結ばせて頂きたい」
そしてサクは、ユウナの前で片膝をついて、片手の拳に反対の掌を当てるという……武官独特の礼を見せた。
それはサクがユウナに見せる、初めての臣下の礼――。
畏まられることに驚いたユウナは、上擦った声を響かせた。
「ちょ……やだ、どうしたの、サク」
「お願いします、姫様。俺の主になって下さい。護衛役を兼ね、玄武の武神将として俺を従僕にして下さい」