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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
「あたしは祠官じゃないわ。娘だからという理由で儀式は成功しないと思う。神獣玄武の反対に合うわ」
ユウナの声が、心の悲哀さを訴えるように震撼する。
しかしサクは揺るがない。
「玄武を説得し、成功させます。玄武のために俺は儀式をするわけじゃない。俺が姫様に仕えたいんです。武神将の力で、ただの護衛役以上にもっと強く姫様を護りたい。
身体だけではなく、命をも捧げたいこの心、俺の決意表明を――、玄武よりまず先に姫様にも認めて貰いたい。俺だけはなにがあっても裏切ることなく、姫様の傍にいるものと。その証として、俺の主になって頂きたいんです。姫様だけが、俺を動かして使える唯一無二の存在に」
何処までも揺るがないサクの目は――
――……俺、姫様が好きです。嫁にしたい気持ちは、変わっていません。昔からずっと……。
あの時と同じ。
「新玄武の武神将たるこのサク=シェンウ、
ユウナ姫にこの命捧げたく」
こちらが目をそらしたくなるほどの、熱情が籠ったまっすぐなもの。
臣を願うサクの言葉もまた、愛の表明。
誠なる愛の覚悟――。
ユウナは、サクから切実で誠実な熱い想いを感じ取り、心が震えた。