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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
船の中は、さっきとは変わって静けさが漂っていた。
わいわいと賑やかな酒盛り商人達の姿が見えなくなっている。
ただ酒宴の残骸が転がるのみ。
「さすがに疲れて、皆寝にいったのね……」
くすり、とユウナは笑った。
商人達が寝ているのなら、玄武縁の品々を手に入れるのは、彼らが目覚めてからが無難だろう。
ともかくそれを含めて相談したいから、早くサクを見つけようとユウナは船内を歩いた。
歩きながらふと考える。
サクの鍛錬後にゆっくり船内を散歩した時、船の中で見かけたのは、男ばかりだった。
「だけど……、船に乗ったときは女性もいたわよね?」
船から黒陵の港を襲った餓鬼を見ていた時、確かに船上から女の悲鳴を聞いた。
そして、サクにネズミを取るように言われた時も、ネズミがいたと騒いでいたのは女性だった。腰を抜かして座り込むその女性から走り去るネズミを、ユウナは追いかけたのだ。
同一か別人かはわからぬけれど、確かに最低ひとりは女性はいたのだ。だがここ数日、女性の姿は見ていない。
個室はユウナとサクの部屋を含めて3つらしい。
あと2つは大部屋で、そこに商人達が数人ずつ雑魚寝しているらしいと、サクが言っていた気がする。
だとすれば、女性はどこに?
さすがに男ばかりの大部屋に、女性が混ざっているとは考え難い。
「甲板のどこかで寝ているのなら、気の毒だわ。それなら女性だけで部屋を作ってあげた方が……。そうだわ、サクが折角部屋をくれたけれど、そこに女性を入れてあげれば……」
部屋以外にいるとすれば、帆の下あたりだろうか。
直射日光が当らず、寒さも少しだけ凌げることができるように思うが、なにせユウナは船旅が初めてのため、どの場所がいいなどという知識は持ち合わせていない。