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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
ユウナが帆の下を中心に歩いていると、カタンと物音がした。
甲板には依然ひとがいないのに、耳を傾けているとやはり物音はする。
「誰か……いるのかしら?」
ユウナは怪訝な顔でその音を辿ってみた。
すると、木の箱の積み荷の山とばかり思っていたその一部に、大の大人が二人横に並んで入りそうな、とても大きな木箱が鎮座していた。
奥行きも結構ある。
カタン……。
音の発生源は、その大きな木箱からだ。
よく見れば、箱の蓋はこちら側に向いており、縁に溝らしき隙間が出来ている。元々は横長に使う箱だったのだろう。
「開く……の?」
どうしてもその音が気になるユウナは、一度深呼吸をしてから、その隙間に手を差し込み、両手で蓋を引っ張った。
すると――。
「――っ!?」
中には蝋の灯。
ぼんやりとした淡い光に照らしたのは、華奢な体格な少年の姿だった。
水色の粗末な服を着た少年が、ちょうど着替えようと両手で下から服を捲り……裸になりかけていた時だったらしい。
「きゃっ!!」
子供のような少年といえども、男は男。
「お姉さん、ちょっと待って!!」
慌てて逃げだそうとするユウナの腕を、少年ががしりと掴む。
身長はユウナの方が大きい。
頭には、白い鳥の羽のような装飾がついた髪飾りをつけている。
少年はそばかすだらけの愛嬌ある顔でにんまりと笑って見せた。
「せっかくだからお姉さん、なにか買っていってよ」
少年の背後にあるのは、大きな袋の山が積み重ねられている。1つや2つではない。10個くらいはありそうだ。