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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
「お姉さん、もういいから。お姉さん、お姉さん!!」
少年がユウナの手から刀を奪う。
「うう……っ」
耳下までの長さになったユウナは、堪えきれず涙を零した。
「リュカあああっ」
声を上げた時、
「姫様――っ!?」
サクが硬い顔で飛び込んで来た。
「姫様、その髪――っ!! お前か――っ!!」
「う、この刀は、ううっ……」
「違う、サク違うの!!」
瞬く間に少年の腹に拳を入れて刀を取り上げたサクに、ユウナは泣きながらその手に縋る。
「気分転換よ」
「……え?」
「すっきりしたあああ!!」
ユウナは泣きながら笑い、両手を挙げて伸びをした。
「生まれて初めてよ、こんなに短い髪。ああ……風ってこんなに気持ちいいものだったんだね。あたし、本当になにも知らなかったな」
サクの切なそうな、なにかを訴えるような目が向けられていることをひしひしと感じながら、ユウナはただ笑い続けた。
さようなら。
リュカ――。
「どう、サク。新生あたしの、短い髪は」
「……お似合いです、姫様……」
サクの声が震え……その目は伏せられた。