この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
「サクは……やっぱり髪の短い女の子は、気に入らないんだ」
人ごとには思えないその台詞。
それにユウナに対しての、挑発的なもののように感じてしまった。
「髪の短い女の子は、嫁にしたくないほど……女以下の扱いにしちゃうんだ? メス小猿……ねぇ」
カチン。
「はい? 姫様……なに怒って……」
「頑張れ、女の子!! サクになんて負けるんじゃないわよ!! 女は長い髪だけが命でもないし、嫁に行くことだけが幸せじゃないんだからっ!!」
突然、ユウナが大声を上げて捕縛した少女を激励を始めた。
「姫様、一体誰を応援してんですか!! あのガキは、姫様を……っ」
「おおっ!? あんた、話わかるねっ!! ただ顔だけがいいお嬢じゃないとみた!! だったらお願い、あたいをここから離してよ」
「いいわよっ!!」
「姫様っ!?」
「サク!! その手首の縄、解くわよ」
「な、なにを…そしたら、あのチビ……」
「解けたわよっ!! って、あら」
「ぎゃあああああああ!!」
少女が高地点から落下を始めた。
「だから言ったこっちゃない……」
「サク、あの子を助けるのよっ!! いえ、いいわ。あたしが、この両手で受け止めるわ。髪が短いからって、なめるんじゃないわよっ!!」
繋いでいた手を解いて両手を拡げて真下に立ったユウナに、サクは唸るようにして声を上げて動いた。
「ああ、もうっ!! なんで姫様を危険な目に合わせたガキを、姫様に怒られながら助けねぇといけないんだよ……っ」
ぶつぶついいながらサクは柱を駆け上り、落ちる少女の服をむんずと掴んで、宙で一回転をしながら着地した。