この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~
「お前が入っていたあの大きい木箱は?」
「船に積んでるはずだけど……。中身は別船に移し替えたけど、あの木箱に色々雑多なもの入れたから。主船に綱で引き連れてそうした貨物船を……って、なにお兄さん…僕達の住処に乗り込んで来て、そこから蒼陵の中心部とか行こうとしてるの?」
「猿、隠れていくのかい!!」
「ああ。お前達は姫様を殺したくねぇんだろ。だったら片棒担げ。俺達は知らずに木箱に入っていた。気がついたらお前達の住処に居た……そういうことに。
そこから先は俺が姫様連れて、蒼陵に向かう」
するとテオンが笑った。
「お兄さん、僕達の……『牙城』から簡単に出れると思ってる?」
子供のもつものとは思えぬ、不敵な笑みを。
「やってみねぇとわからないだろう。俺達は蒼陵でしなければならないことがあるんだ。どうしようとうんうん唸っているのなら、身体を使った方がよほど道は拓ける」
「ふぅん、お兄さん……そんなに腕に自信があるんだ?」
「頭よりはな。お前達の国自慢のジウ殿には負けるが……ああ、今ならそこそこいけるかもしれねぇぞ」
武神将は国の誉れ。
国の勇猛な強者。
ゆえに民は自国の武神将を称賛する。
それに匹敵すると口にしたサクに、本来返されるべき反応はふたつにひとつ。
"お前はそこまで、凄く強いんだ!!"
"自分達の武神将の方が強いに決まってるだろう。虚勢はやめろ"
しかし、鼻でせせら笑うイルヒの態度は、そのどちらでもなかった。
「蒼陵の武神将を称える異国の猿に、いいことを教えてやるよ。
あたい達の兄貴は……
青龍の武神将ジウ=チンロンの息子、ギル=チンロン様だよ」