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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~ 
 


「お前が入っていたあの大きい木箱は?」

「船に積んでるはずだけど……。中身は別船に移し替えたけど、あの木箱に色々雑多なもの入れたから。主船に綱で引き連れてそうした貨物船を……って、なにお兄さん…僕達の住処に乗り込んで来て、そこから蒼陵の中心部とか行こうとしてるの?」

「猿、隠れていくのかい!!」


「ああ。お前達は姫様を殺したくねぇんだろ。だったら片棒担げ。俺達は知らずに木箱に入っていた。気がついたらお前達の住処に居た……そういうことに。

そこから先は俺が姫様連れて、蒼陵に向かう」



 するとテオンが笑った。


「お兄さん、僕達の……『牙城』から簡単に出れると思ってる?」


 子供のもつものとは思えぬ、不敵な笑みを。


「やってみねぇとわからないだろう。俺達は蒼陵でしなければならないことがあるんだ。どうしようとうんうん唸っているのなら、身体を使った方がよほど道は拓ける」


「ふぅん、お兄さん……そんなに腕に自信があるんだ?」

「頭よりはな。お前達の国自慢のジウ殿には負けるが……ああ、今ならそこそこいけるかもしれねぇぞ」


 武神将は国の誉れ。

 国の勇猛な強者。


 ゆえに民は自国の武神将を称賛する。

 それに匹敵すると口にしたサクに、本来返されるべき反応はふたつにひとつ。


 "お前はそこまで、凄く強いんだ!!"

 "自分達の武神将の方が強いに決まってるだろう。虚勢はやめろ"



 しかし、鼻でせせら笑うイルヒの態度は、そのどちらでもなかった。



「蒼陵の武神将を称える異国の猿に、いいことを教えてやるよ。

あたい達の兄貴は……



青龍の武神将ジウ=チンロンの息子、ギル=チンロン様だよ」

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