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吼える月
第17章 船上2
  



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 ある時、浮島にて賑わう蒼陵国に新たな掟が掲げられた。

 発令主は青龍の武神将たるジウ=チンロン――。



『これより健やかなる男女は、青龍殿に仕えたし。刃向かう者、嘯く者、脱走及びそれを幇助したる者は、蒼陵の警備兵により死にて贖いたり』


 倭陵大陸にあった青龍殿は、突如徴収された民によって作られた浮島……大海の真ん中に移され、青龍殿ができあがった頃には潮が渦巻き、誰もが出入り出来ぬ孤島と成り果てた。

 今まで蒼陵国の生活を支えてきた大人達は、命令通り青龍殿に赴くか、警備兵の目を盗んで商人として国外に脱出したのどちらか。


 街から出て行った大人達は、半年経ても帰ることはなかった。


 海に浮かぶ蒼陵の街には、子供や年寄、または病人ばかりが残り、活気づいていた街は廃れる一方。


 そんな中、さらに武神将は新たなる掟を掲げた。

 予言に備えて青龍殿を頑丈に再築するにあたり、今までの10倍近い税金を支払うようにと。それが払えぬ者は、子供を人身御供に差し出して青龍の力の加護を祈願しろと。


 生活力のない蒼陵国。

 税を取り立てる警備兵により、子供が次々に海に沈められる――。



 それを密やかに救ったのが、ギル=チンロン。

 武神将ジウ=チンロンが隠匿していた息子であった。


 それからまもなく、赤き夜が訪れた――。




 ~倭陵国史~


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