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吼える月
第17章 船上2
「髪だけしか女を見て無いなんて、あたしサクを見損なった!!」
「か、髪……?」
嗚咽混じりに出てくる言葉には棘があり、またもや敵意を向けられたサクは狼狽するばかり。
「髪が長ければ、誰でもいいってわけね!? だったらイルヒの成長でも待って、嫁にすればいいじゃない!!」
「は……? なんでイルヒ?」
「離してよっ、あたしはサクの嫁候補から外れさせて頂きますっ」
「ちょっ!?」
「ど~ぞ、髪が長くて美しい女性を嫁になさって下さいませ。そしてその方の武神将になって、末永くお暮らし下さ……っ!?」
ユウナが口を閉じたのは、サクが恐い顔をしてユウナの腕を掴んだからだった。
「……さっきも思ったんですがね、姫様……俺の事誤解してませんか?」
しかし怯んだ態度を見せまいと、ユウナは虚勢を張る。
「ええ、誤解してたわよ。サクがあたしに求婚してくれたのは、あたし自身がいいと、だから武神将にまでなってくれるのかなと思ったのに。だからあたしも頑張ってサクに恥じないようにしようと思ったのに。
それなのに、髪が短くなった途端……あたしの武神将も取り消し!! そんな程度の求婚に、ときめいてしまったあたしの心を返してよ。返しなさいよ!!」
サクの胸倉掴んで、キーキー叫ぶ。
理不尽に思えるこの心の衝動を、どうにかしてサクにぶつけたかった。
女として、ただ泣き崩れてじめじめしていたくない。