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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
「女でもあるまいし、人のこと面白おかしく噂するのはよせ。今は任務中なんだってことを……」
不機嫌そうに説教を始めようとしたサクに、シュウが口を挟む。
「……お前なんでここにいるんだよ」
「あ? お前……一応俺は隊長なんだぞ? あちこち見回りして、部下を」
「見回りなんてどうでもいいだろうがっ!! そんなの俺に任せておきゃいいんだよ。なんのための副隊長だ」
シュウの怒声に訝しげに目を細めたのはサクだけではない。
「シュウ、忘れたのか? 今夜は厳重警備が必要なんだ。ただの見回りじゃねぇんだぞ?」
「わかってるよそんなことは。警備兵としては今夜が大変な時だってことは十分にわかっている。だけどサク……。今夜はもう巡ってこねぇんだぞ!?」
「は? なに当然のことを……」
「ぐがぁぁぁぁっ、このボケ!!」
そしてシュウはサクの胸倉を掴んだ。
……サク以外、シュウの言いたいことに気づいていた。
そう、サクにとって今夜は特別なのだ。
「姫のところへ行ってこいっ!!」
「……は?」
「明日別の男のものになっちまうんだぞ? 今日しかねぇんだぞ、お前の想いを伝えるのは!! なんなら無理矢理でも姫を奪って、駆け落ちでもなんでもしてみろ!! 俺達は警備兵として、快くお前を見送ってやるから!!」
サクは、ぽかんとした顔をして口を開いたままだった。