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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
「シュウ……。この赤い月にやられて、狂ったか?」
「違う!! 俺は……俺達はっ!! お前を応援してきてたんだよ!! お前が姫と結ばれることをずっとずっと望んでいたんだよっ!! お前、苦しいんだろ? 姫が忘れられねぇんだろ? 格好つけんなよ、お前の友はリュカ様だけじゃねぇんだぞ? お前が辛い時、肩を叩くのは……俺達だって出来るんだ!!」
皆が口々にそうだそうだと声を揃えて頷く。
「お前達……」
「行けよ、サク。今夜が最後の機会だ!! 姫のところに……」
「行かねぇ」
サクは悲しげに微笑んで、頭を横に振る。
「俺は……姫様とリュカの幸せを願っているんだ。俺のあきらめの悪さで、ふたりの傷つく顔は見たくねぇ。そんなものを望んで、俺は身を引いたわけじゃねぇんだよ」
「だけどそれならお前……っ」
サクは笑った。
「ありがとな。俺の心配してくれて。俺を思ってくれるなら……明日の姫様の婚儀、祝ってやってくれよ。リュカを好きになってくれよ。あいつ……本当にいい奴なんだよ。俺が姫様を譲ってもいいほどに」
「サク……」
「よぉし、無駄口はここまでだ。頑張って今日を乗り切……」
そんな時だった。
屋敷の中から、男の悲鳴が聞こえたのは。