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吼える月
第17章 船上2
この先、本当に光は見えるのか。
本当に1年前とは違う道を辿れるのか――。
そんな猜疑心に囚われ、息が詰まるけれど。
それでも、進むと決めたからには。
それでも、諦めないと決めたからには。
今までのように、この辛い感傷に尻込みするわけにはいかないのだ。
「あたし……ん……っ」
ユウナの息が乱れ、顔がさらに紅潮していた。
苦しげにぎゅっと目が瞑られ……そして開かれたその目は、誘惑しているかのように妖しげに揺れ、熱っぽく潤んでいる。
はぁはぁと苦しそうな息遣いが、抱いた時のユウナの喘ぎと重なり、サクは急き立てるような己の欲を、必死に押さえつけた。
飲み込まれるな。
理性を保て。
唇に絡むユウナの乱れ髪。
そっと指で掬い取った拍子に僅かにその頬に触れただけで、ユウナは小さく喘いだ。
恍惚めいた、快感を覚えた女の表情。
こんなに物欲しそうにしているくせに――
「あたし……我慢する。サクが……治らないなら、治療はいらない」
赤い唇から出る言葉は、サクの心を深く抉る毒の剣先となる。
治らない、それは即ち……。
「そんなに嫌ですか、俺に……心をやることは」
媚薬を使っても、理性を超えて求められない男の矜持が傷つけられる。
そこまで自分は、男として魅力がないのか。
深く傷ついたその表情に、ユウナは狼狽の色を顔に浮かべた。
「違っ……。違う……の、そういうのじゃなく……」
「じゃあどういうことで?」
「その……。サクが欲しいのは……、そう簡単に上げられるものでは……ないと思う……の」
「え?」
「欲しいと言われれば、なんでもあげる。だけど……ここであたしがうんと言って……それは、サクが……本当に欲しいもの……?」
荒い息のもと、苦しげにユウナは訴えた。