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吼える月
第18章 荒波
しかも、今回の記憶は以前の"発作時"より明瞭に残る部分が多く。だから一層居たたまれず、サクの顔が見れず。
それなのにサクは甘えっ子のようにくっついてくるわ、顔を覗き込んでくるわ。
だからユウナは下にしている袋からはみ出ていた布を引っ張り出して、真っ赤な顔を見られまいとぐるぐる巻きにして、サクから逃げようとしたのだが、
――俺、初々しい姫様も好きなんですがね……?
その布を速攻剥ぎ取りながら、サクは臍を曲げてしまったようで。
――恥ずかしいというのなら、いっそ"治療"でいいですけどね? 媚薬効果を抜いたんだから、治療には間違いねぇし。姫様がぐうすか眠り込んでいる後、夜通し思いきり鍛錬をする羽目になった俺事情を抜きにしても!! 治療なら治療で、いいんですけれども!!
そして――。
――誓約、違反すれば"お仕置き"です。だからさあ、姫様。俺の膝にお座り下さい。
ばんばんばん。
サクは苛立ったように自分の太腿を叩くと、どこか据わった瞳でユウナを促した。
サクは従順ではあるが、理不尽さを嫌う男。
しかも乙女心がわかっていない、武骨な男。
からかわれて悪戯されて"お仕置き"されぬよう、ここは眠ったふりをして"石"になろう…。
そう思ったユウナもまた、サクのユウナに対する理解度がいかなるものか認識していなく、サクはその"眠り石"に口をきかせたのだった。
お仕置きと称して――、ユウナが船旅で疲れぬよう、自ら風除けとなる椅子になって、素晴らしい景色が見えるように後ろ抱きにした配慮を、ユウナは知らない。
無論、サクが前以上に愛を募らせ、彼女に触れる場所すべてに情愛の熱を迸らせていることも――。