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吼える月
第18章 荒波
「駄目だ、もう駄目だ――っ!!」
「きっと僕達が生贄にならなかったから、青龍が怒ってるんだっ!!」
――宙を駆ける一閃。
「ここまで皆で来たのなら、最後まで諦めるんじゃねぇよっ!!」
気をつけるべき部分はサメの顎部である――。
それを既に悟っているサクは、サメと共に落下しながらえらに差し込んだ剣にて、力任せにサメを胴体とふたつに切り離しにかかった。
「網持ったそこのでかいの!! そう、お前だ。お前がさっきまで見せていた"怪力"で、その網でこの胴体を引っかけて動かせ!!」
サクに怒鳴られた巨漢の子供は慌てたようにコクコクと頷きながら、動き始める。
「そこの錨もった背の高い奴!! お前の命中率の高さなら、この縄を振り回して錨をあの太くて頑丈な帆柱にひっかけられるな!?」
こちらもコクコク頷く。
「そこのチビ三人!! 錨の縄を網に括り付けろ。玉結びなんぞやわな結び方は駄目だぞ!?」
「わかってるよ、僕、海の男だもん!! 縄のことならなんでも!!」
「よ~し、だったらお前が先導して、しっかり結べ。出来たら錨の奴に合図し、胴体を吊り上げろ。半分の重さなんだから、そこにいるお前ら全員で縄を引けよ!? お前ら息を合わせられるな!?」
「「「勿論っ!!」」」
「よし、いい返事だ。じゃあ行くぞ、いちにのさんだ。いち、にの……」
「「「さんっ!!」」
サクが剣を端まで押し進めた直後、網のかかった胴体は……、頭部と共に落下するサクとは反対に持ち上がっていき、あっという間に帆柱に吊り上げられた。
「ようし、だったら思いきり揺らして――」
サクの号令と共に揺らされた胴体が、サメに打ち付けられて傾きかけていた船体の平衡を急遽補正する。
「そこで縄から手を離せっ‼︎」
落下を始める胴部。サクは、サメの頭部を踏み台にして再度飛び上がり、強烈な回し蹴りにて胴部を海に蹴り捨てた。
そしてそのまま、脚部の回転の反動を利用して、空中にて新たに襲いかかってこようとするサメに斬りかかる。