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吼える月
第18章 荒波
浅黄色の服を纏った、細身の長身の男――。
双肩から見えるその両腕は隆々たる筋肉がついており、両手に握られているのは、先につれて幅広く反った刀身を持つ、深藍色の飾りが施された長柄の青龍刀。
ここまでの大ぶりなものを両手で扱えるのなら、このシバという男は、見かけ以上に大層な筋力がある。
しかし――。
ユウナが目を見開いて息を飲んだのは。
サクがそんなユウナを庇うように前に出たのは。
その男の威圧や、迸る殺気めいた戦意だけではない。
物騒なものを手にしている荒くれ風の割には颯爽と歩いてくるその男の顔が、やけに涼やかで高貴に整いすぎている美丈夫だったから、でもなく。
風に靡くその男の腰まである長い髪が……燦々とした陽光に相乗するように発光していたからだ。それは……まるで煌めく海面のような光輝く瑠璃色。
黒や茶が普通の倭陵大陸においては、それ以外の…しかもここまで煌びやかさを伴う色は、皆ひとつの括りにされる。
むしろその中でも頂点となる、金や銀など純粋な光輝色の髪色をした方が珍しい。
それらは総じて――。
「お前は、"魔に穢れし光輝く者"!?」
倭陵では禁忌とされる煌びやかな色であり、蔑まれるべき人種とされる。
サクが堅い声を出しながら、ユウナに背を向けたまま……銀髪のリュカと自分の髪以外の"光輝く者"の存在を思い出して震えるユウナの手を握る。
「オレは……シバ。それ以外のなにものでもない」
二本の青龍刀を叩きつけるようにして、堂々たる風情で言いのけるシバ。
しかしサクは見た。
苛立ったように向けられたその細い目には、かつての……初めて会った時のリュカのような、憎しみが宿っていることに。
彼もまた、虐げられた側で育った存在なのだ。