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吼える月
第18章 荒波
「お前……、得意なのは青龍刀じゃねぇだろ。つーか、武器は逆に不慣れじゃねぇか? 体術……なんでぶれねぇ自慢の"足"、歩術を使わねぇで、腕ばかり使う? 錯乱にさせるにしても、せっかくの足が泣くぞ?」
サクの問いに、うっすらと紅潮した顔でシバは答える。
「お前こそ、得意としてるのはそんな細身の剣ではなく、こうした大刀を派手に振り回す類いだろうが。確かにその両刃の武器は珍しい上、切れ味も名品だとは思うが……、お前には役不足。違うか?」
「あははは。そりゃあこの持ち主が女だったからな。女といってもそこいらの女とは違う、雌の猛虎さ。これ自体取り扱いが難しくて、ここ数日見よう見まねで使ってみてるだけだから、これが秘める真実の力は俺にも知らねぇ」
「知らずにそれだけか。お前、他になにを隠してる?」
「お前がすべてさらけ出したら、見せてやるよ」
ふたりは睨み合ったまま、にやりと笑う。
「ひぇぇぇぇっ、あの猿……、№2のシバとやり合ってるよ!!」
「お嬢お嬢!! あいつは何者なんだい!!」
テオンやイルヒだけではなく、子供達の驚嘆と称賛の声を聴きながら、ユウナは目を細めて、刀を交差させて対峙するサクを見ていた。
武闘大会におけるサクの動きは、派手で大胆だ。
特に成人の部に出るようになって、相手が強くなってくればサクの動きも俊敏でキレのいい動きに変わる。
前回の青龍の武神将、ジウとの闘いがまさしくそうだった。
手を抜くことなく、全力で戦ったサク。
結果的には負けてしまったけれど、見ているユウナも興奮して、何度も立ち上がっては、民衆と共に拳を突き上げ大声で応援したいのを押さえ込んだことか。
今のサクはあの時ほどの力は、まるで出していないようにユウナには思えた。
実力を隠しながら、相手の実力を推し量っているのだろうが、サクのあの嬉しそうな顔を見れば、相手がサクにとって不足ない実力の持ち主だったのだろう。