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吼える月
第18章 荒波
「サク、あたし達を信じて!! 大丈夫っ!! あたしだって、やる時はやるの!! だからサクは安心して!! どうしようもなくなったら、ちゃんとサクを呼ぶからっ!! あたしを信じて、お願い!!」
サクはサクの戦場で戦っている。サクと共に横で戦うことが出来ないのなら、違う場所で頑張りたい。サクが自分を信じて大事な剣を渡してくれたのに、結局サク本人を必要とするようなそんな頼りない"相棒"にはなりたくない。
サクの足手まといになりたくない――。
そう思うユウナの目には、戦意のような強い力が宿っていた。
そして言い出したらきかない頑固者だとサクもわかっていればこそ。
「――……だったらっ、どうしようもなくなる前に絶対、俺を呼べよ!? 姫様、いいなっ!!」
言葉遣いが乱雑になったあたり、サクはサクで葛藤の末の了承なのだろうと、ユウナは密かに思う。
それでも――信用してくれたのが嬉しかった。
サクが信じてくれる限り、自分はどこまでもやり抜こうという勇気が漲(みなぎ)る。
「わかったわ!! どうしようもなくなる"ちょっと前"でちゃんと呼ぶから!!」
「ぐああああ。なにが違うんだよ……。まずは元凶を片付けるのが先決なのは確か。姫様を頼んだぞ、テオン、イルヒ!!」
「「頼まれたっ!!」」
それぞれ格闘していた両者は、揃って元気のいい声をあげて競り勝つと、ユウナの前に護衛のように立って、サクに手を振った。
「……サクの馬鹿。テオンとイルヒの方をすんなり信用するなんて」
そうユウナがぼやいたことを、サクは知らない。
ユウナ、テオン、イルヒ……、三人が三人とも互いを護り合うようにして、赤い目の子供達の攻撃を凌いでいく。
ユウナの剣は、防御のみに使われた。
「やるわね、貴方達っ!!」
「お嬢もやるじゃんか!! さすがは、猿使いっ!!」
「イルヒ、頭突きとは考えたな」
だが――。
「女を殺せ」
「殺して青龍様に捧げろ!!」
幾ら戦ってみても果てが無く、三人ただ体力が削られるだけで、次第に息切れが隠せなくなってきた。