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吼える月
第18章 荒波
 

「あたいが海に、船に乗ったからだ。きっとだから神獣が怒ったんだ。あんな怪物寄越して、怒ってしまった。だからすべてあたいが――っ」




「やった!!」

「青龍様に供物ができた」

「あと、ひとり」

「そうすれば僕達は助かる」

「神獣に祈りを」


 近づく背びれ。

 諦観するイルヒ。

 泣き喚くテオン。


 笑い続ける子供達。



 ――ぷちん。


 ユウナは声を荒げた。



「仲間を見殺しにさせる青龍のどこがありがたい神獣か!! 善し悪しもわからぬ愚かな子供は、ひっこんでなさい!!」


 怒気の混ざった言霊は空気を震わせ、子供達はその研ぎ澄まされたような迫力に縛された。


「仲間のために、無実の罪を被って命を捧げようとしたイルヒを殺させはしない。お前達についている目も耳も役に立たないというのなら、あたしの言葉を、することを心で感じなさい」


 そして――。


「見ているがいい、青龍が本当に必要としているのは供物なのか。本当に誰かが死ぬことを願うものなのか。

もしあの青龍が偽りであるならば、あたしはどんなことをしても死なず、真実の神獣に生かされるだろう。

なにが真実なのか、現実を見よ――っ」


 恫喝するように叫び、そしてユウナは、


「お姉さん!?」

「姫様――っ!?」



 飛び込んだのだ。


 危険な魚が近寄る海の中に、イルヒを助けるために。

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