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吼える月
第18章 荒波
「お姉さん、お姉さん――っ!!」
ユウナは海に一度深く沈んでから、両手でばたばたさせながら海面から顔を出す。そして犬かきの要領でイルヒに合流した。
「馬鹿、お嬢……っ、早く早くあの柱から上がって。お嬢なら届く!!」
「イルヒが先よ。あたしが支えてあげるから。あたしを踏み台にしなさい」
ユウナがイルヒを抱きかかえるようにして、船体から海に向けて飛び出ている柱に移動する。
「駄目だよ、そんなことをしたらお嬢がっ!!」
「大丈夫。あたしは大丈夫。神獣がついている。玄武があたしを助けてくれるわ。だから……」
イルヒの腰を両手で持ち上げるようにして柱に掴まらせると、ユウナは叫んだ。
「サク――っ!!」
「おせぇんですよ、姫様っ!!」
サクがイルヒが掴まった柱の、縄で括られたようにして跳ね上がっている反対端に飛び降りれば、反対端に掴まっているイルヒが悲鳴をあげて宙に持ち上がる。
サクは怒鳴った。
「テオン、イルヒを受け取れっ!!」
そしてそのまま海に飛び込むと、魚が到達するよりも前にユウナに合流してその体を抱きしめる。
「サク。玄武の力、使えるわね!?」
「ええ。使いますよ、派手に。ここで使わなきゃいつ使うってんだ。ここまで待たせたこと、後で覚えてろよイタ公――っ!!」
「え、なんでイタ公ちゃ……」
思わずユウナは口をつぐんで目を細めた。
サクが、水色に発光したからだった。