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吼える月
第18章 荒波
 

――闘いに集中しろ、馬鹿ものが!!


 怒声混じりのシバに怪物の爪攻撃から救って貰い、礼もろくにしないままに真っ赤になってサクは叫んだ。


――交わってなんて、挿れてなんかねぇよ!! 理性を最大限に稼働させて、"すりすり"しただけだ!!"


――こいつ……、頭やられたか? それとも元々か?


 シバが哀れんだ目でサクを見つめるが、サクは気づかない。


『"すりすり"だろうとな、駆け出しとはいえ神獣の力を体内に宿す武神将たるお前が、より強い念を抱いて姫にしたことは、ある種の和合……小僧が無意識にしでかした房中術となす。

房中術の一種である穢禍術とは違い穢れたものではないが、お前の強い念をもってした交合によって、小僧の"残滓"を姫に"依代"として残した以上、これも立派な房中術となりえるのだ。さらに姫は玄武の祠官の血を引き、我の力と相性もよく、依代としての素質もよい。お前の残滓を通して、我は間接的に姫とも通じているのだ。

今は一過性だが、もし小僧の残滓をより強く姫に……』


――残滓残滓って……出してねぇよっ、寸止めだ俺は!!


『ならば小僧の……体から滲み出た粘液が姫に付着しているのだろう。ふたりの淫らな体液を攪拌(かくはん)して、よく混ぜ合わせたようだからの』



――き、汚らしい言い方するなよ、な、なにが体から滲み出た……粘液だっ、淫らな体液を混ぜ合わ……っ、か、攪拌……っ、う、ううっ、俺はっ!! ただ、愛ある"すりすり"をしただけで……っ、


 その時シバが怒鳴った。


――こんな緊急時に、下品なことを叫ぶな、愚か者が!!


 シバの表情は変わらずとも、その顔は赤い。

 意外にこの手の話はシバは弱いのかもしれない……。そんなことを思ったサクは、眼下の子供達の動きがおかしいことに危惧して飛び降りようとした。


『言ったろうが。まだ小僧の出番ではない。我"ら"に任せよ』


 ユウナと会話も出来ないのに、勝手にユウナと懇ろの仲になったような口振りなのが気にくわない。


『我に妬くな、馬鹿ものがっ!!』
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