この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
 

 明かりが消えた祭壇の間。

 祭壇に飾られた玄武の神像が、窓に大きく映る赤い月の光に照らされて、血に染まっているかのような凶々しさを見せつける。


「お父様……?」



 ぼんやりとした月明かりが、部屋の隅に朧な輪郭を浮き彫りにさせる。


 なにか……人影があった。

 それはこちらに背を向けて立っている。


 それは父だと思った。

 立っているということは無事なはずだ。


 だからユウナは、まだ賊の手が父に及んでいないのだとほっとする。


 
「お父様、ご無事ですか……?」



 ユウナの声に、それは僅かに体を震わせた。



 そして、ユウナは見たのだ。



「お父――……」



 すべての音も、すべての時間も……すべての思考も停止した。


 それは父ではなかった。


 闇慣れしたユウナの目に映るのは……白銀の長い髪。

 倭陵では禁忌とされている、光り輝く髪の色。



 ユウナは咄嗟に予言を思い出す。

 これは……倭陵を滅ぼす、悪しき"異端者"だ。



「お父様は……お父様はどこ!?」



 警戒に声が震える。


 白銀の者は、ひとつ深呼吸をしてこちらを向く。


 その顔を見る前に、その者が手にしていたものに目を奪われる。



 片手には、力ない父。

 反対の手には、父の胸を貫く小剣。



「お父……様……?」



 どさり。


 ユウナの目の前で、父が放られる。

 どくどくと……床が父の血を拡げていく。



「お父様……お父様!?」



 抉られている胸。

 すでに父は絶命している父の前に座り込み、ユウナは泣きながら動かぬ父の冷たい体を揺すぶった。


「お父様、お父様っ!!」



 そして――。



「いやああああああああ!!」




 ユウナは悲鳴をあげた。






/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ