この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第18章 荒波
「よし、全員が反省しているようだ。じゃあ行くぞ!?」
皆が息を飲んだ瞬間――。
「――っ!?」
目をつむった子供ひとりひとりの額に、サクはぴんぴんと人差し指で指弾きをしたのだった。
「これにてお仕置き終了」
緊張が解けてぐだぐだになって崩れる子供達。一番気を張っていたらしいテオンが一番上に崩れた。
「テオンとイルヒもご苦労だった。イルヒは……海で馬鹿なことを考えたから、お前もお仕置き」
「あたっ」
さらに一番上にイルヒが崩れ、子供達の山が積み上げられた。
それを満足気に見て笑うサクに、微笑むユウナはサクの肩に手を置く。
「ふふふ、やはり血なのかしら。ハンもそうやって怖がるサクを虐めてたわね。勿論、あたしもそうされたけど……。ふたりでよくぶるぶる震えて泣いたわね」
ユウナの口から父のことが語り出されれば、サクは内心切なくなる。
ハンとの思い出が、未来にはもうないと思えばこそ。
「サクの子供好きの大方は、ハンの血によるものよね。ふふふ、虐めちゃうのは愛情の裏返しってとこかしら」
「俺……、確かに子供好きです。子供が可愛い。他人の子供ですら可愛く思うのに、それが俺の子供なら……どんなに可愛く思えるんでしょうね」
いつか、ユウナが生んだ自分の子供を育てられたら――。
ユウナと一緒に、ハンとサラのように子供を愛せたら――。
サクは肩にあるユウナの手を上からぎゅっと握る。そして願いを込めて、熱っぽい眼差しでユウナを見つめた。
「俺と……姫様の子供なら、どんなに可愛いでしょうかね?」
「………っ」
言葉を詰まらせているユウナに、サクは自嘲気にふっと笑い、ぽんぽんとユウナの手を軽く叩いた。冗談だよと言いたくない代わりに。
サクはユウナに背を見せたまま立ち上がった。
今振り向けば、きっと……、懇願しそうになってしまうから。
俺を愛して。
俺の伴侶になって。
俺の子供を生んで。
自分は待つと言ったから。
ユウナはちゃんと考えると言って、あそこまで体を許してくれたから。
胸の中の荒波を鎮めるように、サクは声を上げた。
「さあて、ぼろ船の補修補修。おら、起きろ。いつまでのびてやがんだ」