この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第18章 荒波
やがて、船内には笑い声が響く――。
「さあ、船を立て直すぞ。お前達、船の補修はできるのか!?」
「勿論だよ、猿!!」
「任せてよ、猿!!」
「今度は期待に応えるよ、猿!!」
「イルヒの真似して猿はよせ、猿は!! 俺のことは"サクお兄様"と呼べ」
「うん、わかったよ。サルお兄さん」
「テオン、俺はサルじゃねぇよ、サクだ!!」
「「「あははははは」」」
「ああっ、ようやくあたいの亀ちゃんみっけ。しっかしなんでこんな暗いところに紛れ込んだんだろ。あ、どこに行ってたんだよ、シバ――っ!!」
……サクもユウナも知らなかった。
「……あの男、武術だけではなく神獣の力もあるのか。武神将……? まさかな。あんな若い男、聞いたこともない。"あいつ"とどちらが上か、手合わせさせてみたいな。
おかしなことを口走る癖があるようだが、まあそれは欲求不満ということで。あの統率力といい、あの男……、俺達にとって吉か凶か。男を動かすには、あの女、だな。利用出来るものは、とことん利用するまで」
遠くから場の終結を見守っていたシバの無表情さに、どこか不穏さを思わせる自嘲気な嗤いが浮かんだことを。
そして――。
「さあ、ギルの元へ」
シバの肩に留まっていた一羽の鳥が、冴え冴えしい黒い瞳を揺らし、文を足につけて空高く舞い上がった。
ふたりは知らない。
この先に待ち受けているものを――。