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吼える月
第19章 遮断
・‥…━━━★゚+
船の補修に手慣れていると子供達が豪語する通り、崩れかけた船はシバ監修のもと、なんとか持ちこたえたまま、とりあえず目的地に向かう。
予定していた潮流に早めに乗れたことだけではなく、風の強さや向き、波の高さなどすべての好条件が重なったのも、外見上痛々しい船が頓挫する前に目的地に着くためには幸運なことだったらしい。
荒波を鎮めて、船を好調に滑らせているのは、サクと今サクの頭の上にて、凛々しい顔つきをしながら仁王立ちしている白いふさふさな毛並みのイタチのおかげであった。
玄武の力が有効だと知ったイタチは、サクと共に海からの外敵から船を護り続けてながら、頑丈とはいえぬ船に負担がかからぬ程度の水の力にて、安全ルートに船を運んでいるが、現在はほぼ天然の自然力だけで船は動いているらしい。
「玄武の堅固さでサメとかから守れるのなら、なんで船がこうなる前にこの力を使ってみなかったんだよ!?」
海を見ながら、サクは頭上にて二本足にて踏ん反り返っているだろう……イタチに声をかけた。
無論、傍目では頭に小さな亀を乗せて、ぶつぶつ独りごちている図のため、大きい声は出せない。
『我は、あのイルヒとかいう娘によって疲労三昧であったのだ!! 小僧は知らぬだろう、神獣の我があんなことこんなことまでされたことを。我は毬ではあらぬというのに!! 我は跳ねぬ!! 我は転がらぬ!! 我は遠くに飛ばしても戻ってこぬ!!』
サクの頭に流れる映像に、サクは顔を同情に歪ませた。子供だから……というよりは、イルヒという少女の性格が容赦ないようだ。