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吼える月
第19章 遮断
その時、ユウナの目の前に走ってきたのは……ネズミを追って来たイタチ。泣いているユウナを見ると動きを止め、目をくりくりさせてユウナを見上げた。
「イタ公ちゃん……。大丈夫よ、あたし。心配してくれてありがとう。たとえ負傷したお魚から残虐非道だと罵られようとも、あたしは頑張るから」
ユウナは手を伸ばしてイタチを捕まえると、頬にすりすりして、溢れる涙をそのふさふさとした白い毛で拭う。
「イタ公ちゃん……。弱いものを屠って生きようとするあたしを嫌いにならないでね。あたしも辛いの……。凄く辛いの……。もう神獣のご加護を得られなくなってしまうかもしれないけれど、だけどこのひとが……」
シバのコメカミにぴきんと青筋が立った。
「オレは鬼畜か!? その白いのを捨て、さっさと小刀を返せ――っ!!」
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「……珍しいね、シバが調理してるの。しかも食べやすく小さく加工して。あそこまでになったら、元がどんな魚だったのかわからないね」
「だけどテオン。シバから異様な怒りの空気……出てない? というか、どうしてお嬢、さばいた魚見て泣いているんだろう」
「あ、猿お兄さんが飛んで来て、シバに噛みついた。うわっ、シバもあそこまで猿お兄さんに声荒げるんだね。いつでも落ち着いて冷静なひとかと思ってたけど。まあ面倒見はいいけどね、兄貴と一緒に僕達に色々と教えてくれるんだから」
「……はぁ」
「どうしたの、イルヒ」
「多分……、あの場を笑っている皆も思っていると思うけど、お嬢と猿と離れたくないなぁ……。あたい、大好きなんだよね、あのふたりが」
「………」
「お嬢がまだ相手に猿を選んでいないのなら、もしも兄貴の女になってくれたら。……ずっと一緒にいられるかなぁ……」
テオンは、ぎゃあぎゃあと言い争うサクとシバ、そして泣き続けるユウナをじっと見つめていた。