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吼える月
第19章 遮断
――おいシバ。俺、一口しか食べてねぇんだぞ!? 俺、十分働いたじゃねぇか!!
――それに勝る卑猥さを見せつけた罰だ。これに懲りたら貴様の下劣な妄想を言葉にしてひとに押しつけるな。子供達の教育にもならん。
――下劣な妄想……!?
――……。サク、半分こしましょう?
サクの働きをよく知るユウナは、仲直り代わりとして、自分の分として椀一杯によそわれていたほかほかの食事を、匙ですくってサクの口に差し込んだ。それだけでサクは幸せそうに目を細めて、味わうようによく咀嚼する。
――ひんほんみらいれうれひー(新婚みたいで嬉しい)。
――ふふふ、なにを言っているのかわからないけど、こうしていると昔を思い出すわ。サクが昔に戻ったみたい。はい、もう一回、あーん。
――あーん。ひめはまほあーん(姫様もあーん)。
――あーん。ふふふ、しはろれろうりおいひーわへ~(シバのお料理おいしいわね)。
――ひめはまはらべさへれくれるかられす(姫様が食べさせてくれるからです)。こんろ……(今度)、こんろ、いふはひめはまのれろうり……(今度、いつか姫様の手料理……)。
――僕達にはわからない意味不明な会話をして、とにかく幸せなのはわかるけど、なんか見てられないや。うわっ、イルヒ見ろよ……。シバがすごい鳥肌だ!! 全身総毛立ってる……?
――ごめんテオン、あたい……頭冷やしてくる。大人って……、だから大人って……。って、え……"かちゃ"?
――言葉にしなかったらなにをしてもいいってわけじゃない!! 幼児返りした挙げ句、公衆の面前でなにをしてる!! 貴様、それでも"戦う"男か――っ!! 男としての矜持はどこに行った!?
――は!? ちょ……待て!! シバ、なんで俺に刀振り回す!?
――サク、おすわり!! 喧嘩しないの!! 食事中でしょう!? もう食べさせてあげないわよ!?
――え、え!? 姫様、でもこいつからすげぇ殺気が……。うわっと。
――シバもおすわり!! 食事中は騒がないの、いい大人の男でしょう!? それとも貴方もお行儀悪い子供だと叱られたいの!? 貴方はそんな男なの!?
――すごいやあのお姉さん……。
――あのシバがおとなしくなった……。かなり不機嫌そうだけど……。