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吼える月
第19章 遮断
「蒼陵でも、青龍はなんらかの異変の兆候の……お前の言うところの"揺らぎ"を感じていたのかもしれねぇな。だがまあ、青龍も神獣である限り、お前と同じように見ているだけしか出来なかっただろうが。
だったら。その揺らぎとやらが今、根城ともうひとつの、ふたつに分かれて青龍の神気を蝕んで乱している……ということか?」
つまりこれから向かう先は、神獣側から見れば敵になる――。
サクは、偽青龍を作り出した得体の知れぬ力を思い出していた。
そして同時に、海に破り捨てたハンからの手紙の内容も思い出していた。
"リュカの足を玄武以上の力で癒やし、"擬装"させていたのは誰か。その者は、神獣以上の力があるってことだ"
それが神獣の反勢力になるのなら、ゲイの命に従っている様子だったリュカは、関係しているのだろうか…。
追いつめるために、蒼陵に逃がしたのだろうか。
そこまで"邪"に染まっているのだろうか――。
否定出来ぬ自分を感じて鬱々とした気分になり、振り切るように数度頭を横に振った。唐突に起きた震動に慌てたイタチは、振り落とされまいとサクの襟足の髪をひっしと掴んで、なんとか持ちこたえる。
そして。サクに向けられたイタチの見解は、サクの予想からずれた。
『それならば話は早いのだが、我はこのふたつの方向から感じる"なにか"に、魔の類いなる邪なるものは感じぬのだ』
「青龍の力の加護がなくなった……その原因にはなりえないと?」
もしも、ふたつの方角にいる誰かが、得体の知れぬ力で青龍に敵対し、神獣の力を失わせていたのなら。
そのふたつの勢力をなんとかすれば、青龍は力を戻して本来あるべき姿にて蒼陵を加護するのでは。そうしたら民を苦しめるジウの奇行もなんとかなるのでは……と単純に考えていたサクであったが、前提が違うのであれば話は感嘆に解決しない。
そのふたつのものは、一体どんな勢力なのか――。
不穏さだけが煽られる。