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吼える月
第20章 対面
  
 シバとはこんな人間だと大まかにでも言えるほど、会話らしい会話はなく、ただの遠目での観察だけで終わったのが消化不良のユウナではあったが、シバのサクに対する態度はなにか違うように思う。

 サクのつぶやきを絶対聞き逃さず、特にサクが自分に意地悪なことを言う度に、今までの無機質な仮面をかなぐり捨てて、生きた人間らしい歪んだ表情を見せて、自ら武器を持って"構って"と接触してくる。

 子供達も驚くほどに。


 多分サクもそれに気づいている。

 だからサクは、子供達の前だろうが、ふたりだけに秘すべき思い出を口に出しつつ、シバをちらちら見ながら"仲良く"しようとしているのだろう。

 特に昼餉の時らへんから、それが顕著になったと思う。

 ……自分を巻き込むくせに、仲良くなっているのはサクばかりで、なにか面白くないけれど。


 サクは、シバになにを感じているのだろう。

 シバは、サクになら心を見せられるのか。


 同性ゆえ? 武人ゆえ?


 そこに僅かなりとも疎外感や嫉妬を感じながらも、事前告知してきたシバという人物は、思った以上に優しさがあるのかもしれないと思った。

 それだけ自分が、同じ場所で過ごす船旅仲間に親近感を抱いてしまった、ということでもあるのだが。


 どこに連れられるにせよ、怯えも恐怖もない。

 ただ、いつも視界に入るサクがいないのが不安なだけで。


 だが、それを依存だと思えばこそ、ユウナは気丈に笑って歩いた。


 後は、気になることが二点――。


 姿を見せなくなったイタチの安否と、


――イタ公、どうした? あ、"船酔い"? 吐く……って吐きながら言うな!! お、お前、ううっ、良く噛んでネズミを食え!! 船酔いよりも消化不良なんじゃねぇか!? きっとだからおかしなだじゃれなんか……あ、姫様はこっち来ないで下さい。思いきり3日は魘(うな)されます。


 サクが会話できるらしい、小亀の体調不良。

 サクが指先で懸命に甲羅を摩っていたあの亀は、いまはサクの頭上。

 元気になっただろうか……。
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