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吼える月
第20章 対面
「気をつけてね、お嬢。ああ、猿はそこら辺できゃっきゃと適当に跳ねててよ。猿は目隠しあろうがなかろうが、関係ないみたいに元気だし。こういう時は便利だねぇ、お山育ちの猿は」
「俺のは"野生"じゃねぇよ、チビメス猿!」
暗闇の中、聞き慣れたサクの声がユウナの不安を緩和させる。
イルヒという介添え役はいるものの、不安定な暗闇で歩かされているユウナの足はおぼつかなく、よろける度に転ばぬようにテオン他、子供達が支えてくれて、その度にその親切心に心が温かくなる。
「ごめんよ、お姉さん、猿お兄さん。外部の人間を兄貴の元につれる時には、こうやって目隠しをするのが掟なんだ。正直……家族みたいなふたりになら、場所がバレてもいいと思うんだけど」
申し訳なさそうなテオンの声に、子供達の声が追従する。
本当にいい子達だ。
今までの辛いことが癒やされていくようだ。
「大丈夫よ。だってシバまでが、掟を緩めて生きてあたし達を生きてここに連れてきてくれたことだけで、ありがたいもの。船の上だって、あたし達を虐げることなく、色々食べさせてくれたり色々知らないこと教えてくれたり。最後には歌を歌ったり、鬼ごっこしたり……凄く楽しかった。本当に皆とわいわいして、あたし楽しかったもの」
「僕達……ユウナの命狙ったのに」
「ユウナ、命をかけて助けてくれたのに……」
名前で呼ぶようになっている子供達の感激の涙声が、ユウナの耳に届くと同時、ユウナを手を引いて先導していたイルヒが、突然ユウナに飛びつくように抱きついてきた。
「……お嬢っ、あたいは優しくて楽しいお嬢が好きだっ!!」
「イルヒっ!! あたしも可愛いイルヒが好……誰、誰誰っ!?」
ユウナが声を上げたのは、今し方抱きしめあったはずの小さな温もりが突如消え、代わって腰になにかが絡みついて、大きななにかに引き寄せられて包まれたからだ。
頭の上から、声が落ちる。
「……俺です、姫様。見えずとも、もういい加減、俺の感触覚えてくれてもいいでしょう? 名前を呼ばせるチビ達より、俺との方がよっぽど"仲良し"なんですから。それとも、俺の体覚えられねぇほど、まだ堪能し足りねぇんですか?」
拗ねたような、どこか面白くないというような口調だ。